赤線地帯

ミゾケンさんの遺作です

最後くらい奇を衒わずに得意な作風で撮らせてあげたかった

赤線地帯
1956年制作の大映映画です。
監督はミゾケンさんこと溝口健二で、この作品が遺作となっています。
ミゾケンさんと言う人は「雨月物語」「山椒大夫」「西鶴一代女」などの時代劇で「名匠」と呼ばれた人なんですが、わたしは時代劇が苦手なのでどれも見ていません。
見たことがあるのは今回見た「赤線地帯」だけなんですが、これを遺作と呼んでしまうのはミゾケンさんほどのビッグネームに対して失礼かなって思っちゃいました。
ミゾケンさんご本人は「ワシは現代劇も撮れる監督なんじゃ」とか思っていたかもしれないんですが、現代劇だから新しいことをやってみようとした黛敏郎の音楽なんて要らん演出だったなと残念に思います。
新しい時代に向けて近代国家らしい映画を撮りたかったのかも知れないけれど、こんなテーマだからこそご自身の得意な撮り方にフォーカスして、情感のある最後の赤線地帯の女性たちを描いてみたらよかったのになと思いました。

あんまり褒めていない理由

ここまであんまり褒めてないのは同じ1956年制作の「流れる」の存在があります。
こちらは前年の映画賞を総なめした成瀬己喜男の「浮雲」を受けての作品で、成瀬が思っていたよりも潤沢な予算があったんじゃないでしょうか。
オールスターキャストで描く傾いた芸者置屋の映画なんですが、このできが素晴らしくよいので、ミゾケンさんに対してはハードルを上げたくなるんです。


もっとも芸者置屋と吉原の女たちとでは醸し出す空気が違うのも「そうなんだろうな」と想像するしかないんですけれど、ミゾケンさん的にはキャスティングで不満があったかもしれません。
女性たちの主要キャストだけでもスターを配役したかったかもしれないですが、お嫁に行って結婚生活に失敗する「よりえちゃん」なんかスターの顔じゃないですから。
田舎っぽくて素朴なよりえちゃんにはあのくらいの配役でいいと思われたかもしれませんが、京マチ子、若尾文子と一緒に働くには素朴過ぎて物足りなかったです。

まとめ

イマイチなことが多い「赤線地帯」ですが、木暮実千代が演じた通いの女給さん「ハナエちゃん」はとても良かったと思いました。
この人自身も赤ちゃんがいて病気の旦那さんを養うバイタリティのある役なんですが、家族と一緒に仕事帰りに支那そば屋に寄って子供にミルクをあげようとすると自然に足がダランと開いちゃうところとか、ネオリアリズムな演出と思いました。
木暮実千代ってマダムってイメージが強かったんですが、他の役者さんたちと比べても誰よりも共感力が高くて弱者目線がある演技だったと思います。
木暮実千代再発見と言う意味で見てよかった映画です。

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けろ
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沖縄移住35年のアラカン女子です。
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あんまり深刻に考えていない糖尿病患者です。
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