期間工で内地に行った最初の日
同宿はテンション高くて痛い女
結局わたしは静岡での期間工の仕事が決まったんです。
工場勤務で時給1,000円は沖縄の給与水準から見るとかなりいいです。
期間は3ヶ月。
「沖縄移住、会社とキャリアアップとまだ23歳のわたしたち」小浜島で3ヶ月間頑張った記憶があるので3ヶ月ならなんとかなるかなと思ったのですが、初日、静岡に着いてさらに掛川市に移動して事務所で「今日はあなたたち二人で泊まってください」と言われた沢田さん(仮名)と言うわたしと同じ歳だと言う女の人がね、なんとも不穏で。
その時はわたしの方は表面上だけでも仲良くしようと思ったんですけれど、沢田さんたら派手な金髪で、初対面の挨拶もそこそこに「あたしキャメロンディアスになるの!」って。
キャメロンディアスが出てくるところがなんともなーなんですけれど、念のため言っておきますと、わたしが42歳の頃はすごい人気だったんです。
けど、いきなり「なるの!」って宣言されても、「はいはい」ってうすら笑いでやり過ごすしかなくて。
二人で2DKのアパートに泊まるんですけれど、沢田さんって夜中に大音量で音楽かけそうな女だと思ったんですけれど、想像のはるか斜め上を行ってました。
ダイヤの指輪がない!
夜中こそ静かに寝ていたんですが、翌朝、隣室の沢田さんは早くからなんか物音を立てているので、「おはようございます」と声をかけたら、ものすごい剣幕で「あたしのダイヤの指輪がない、けろさん盗んだでしょう、返して。あれは両親から洗礼の時にもらったニューヨークで作らせた指輪なのよ」ってまくし立てるんです。
そう言えば自分はクリスチャンだ、と言っていたなと思い返したんですけれど、今回もツッコミどころが多すぎて。
大体、わたしはダイヤの指輪に関心がないし、指輪を盗んでみてもサイズ直しとかで手間ひまかかってとても引き合わないし、それにそんなに大切なものなら期間工の共同生活の場に持って来る方がバカなんじゃないって話。
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「わたしの荷物調べたらいいよ」と言ったら、沢田さんはわたしのバッグを開けて指輪を探したんですが、当然ありません。
「あんたうまく隠したわね。このことは会社に報告するし、警察にも相談するから覚えといて」と沢田さんは捨て台詞を吐き、そのままこの日の夕方にそれぞれの寮に案内されるまで、事務所でガイダンスとか色々あったんですが、お互いそっぽを向いていました。
まとめ
沢田さんとはその後もお互い無視をしていたので、本当に会社や警察に言ったのかはわからずじまいでした。
わたしは指輪が見つかったものだと思っていましたが、10日ほど経って、期間工の休憩時間にトイレに行こうとしたら沢田さんに腕を掴まれて「指輪の件なんだけど、あなたを警察に突き出すのはやめることにしたわ。けろさんにも家族がいるでしょうし」と言われました。
わたしも沢田さんもこの時42歳。
こんないい歳になった女が住み込みの仕事に就くなんて、事故物件の吹き溜まりでしょ。
それに気づかなかったわたしがバカでした。
和気藹々と楽しく仕事をしてみたいと思っていたわたしの願いはこんなふうに初日でたやすく打ち砕かれてしまったんです。
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